割烹一の谷ブログ

「おせち」料理のご紹介

2023/10/21

<おせちの料理紹介>

【田作り】
片口鰯を肥料として使った田畑が豊作となったことから、五穀豊穣を願う縁起物となりました。また、頭から尾まで用いることから「終わりまで全うする」という意味もあります。
炮烙(ほうろく)という平たい土鍋で煎りつけます。煎りすぎると苦みが出て、煎りが甘いと生臭さが残るため、絶妙なタイミングを見計らいます。煮詰める際にも、飴にならないよう細心の注意を払い、丁寧に煮詰めていきます。

【黒豆】
黒く日に焼けるほどマメに勤勉に働けるよう、という願いが込められています。よく働くためには健康でなければなりません。黒には邪気を払う力があり、健康祈願の意味も含まれます。
一の谷では一週間かけてじっくりと戻します。戻している最中の工程で少しでも間違えれば良い黒豆は炊けないため、常に気を配り、黒豆の様子を見続けます。

【子昆布巻】
養老昆布(よろこぶ)という語呂合わせで、不老長寿の意味が込められています。
昆布巻に用いる青板昆布は、昆布を青竹で青色にした物で昆布巻には欠かせません。じっくり二日掛けて煮込むことで、普通の昆布では出せない程よい膨らみと柔らかさを楽しめる食感となります。
子は鱈の子(黒子)を用いるのが定番ですが、一の谷では青板昆布によく合うスケトウダラの子を使用しております。

【青梅翡翠煮】
木偏に毎と書く梅は、「毎」が子どもを産む母を表していることから子孫繁栄を願う意味を込められます。梅干しや甘露煮のシワから「シワが寄るまで元気に」という長寿の願いも込められます。
青梅は5月中旬頃に仕込みます。青梅に針を打ち、一晩水につけ、銅鍋で一週間毒抜きをして三回にわけて薄蜜、中密、本密で仕上げていきます。翡翠のように鮮やかな緑色はおせちの中に華やかな彩りを添えてくれます。

【穴子龍眼】
龍の目を表した料理です。龍は昔から立身出世の象徴と言われており、おめでたいおせちには欠かせません。
鶉卵を穴子で巻き、醤油味醂酒で炊き込み、半分に切り込み切り口を見せることで龍の目に見立てます。瀬戸内海の美味しい穴子を使用し、ふっくらと柔らかく仕上げます。

【子持鮎有馬煮】
子持ちの鮎は子孫繁栄を象徴する縁起物です。
九月になると鮎が子を持ちます。その時期の鮎を一度素焼きにし、番茶で六時間かけて戻します。これにより骨まで柔らかくなります。酒、みりん、たまり醤油、ザラメを徐々に加えて丁寧に仕上げ、最後に有馬山椒を加えます。
鮎は京料理の職人にとって欠かせない食材の一つです。

【数の子】
卵の数が多いことから子孫繁栄の願いが込められた縁起物です。
数の子の強い塩気を抜くために、薄い塩水につけます。塩で塩を呼ぶことから「呼び塩」と呼ばれる手法ですが、ここで塩味を抜きすぎると味がぼやけてしまいます。一発勝負なので、五感をしっかりと整えた状態で仕込みに臨みます。

【むきもの】
食材を彫刻のように細工し、縁起物や祝い膳を彩る装飾にかたどったものです。
長年培ってきた職人としての腕の見せ所です。

◆ 松笠慈姑(くわい)
慈姑(くわい)は、塊茎から突き出た芽を「芽出度い(めでたい)」と見立てて縁起物としておせちに入れられる食材です。芽が出るイメージから出世する、大成するというお願いも込められています。
松笠慈姑は、慈姑を松ぼっくりに見立てて切り込みを入れて煮たものです。松も縁起物ですので、おせちに欠かせない一品となっています。

◆ 鶴の小芋
「鶴は千年、亀は万年」という言葉の通り鶴は長寿の象徴であり、夫婦仲が良く一生連れ添うことから夫婦円満の縁起物とされています。
里芋に、鶴に見立てた切り込みを入れて、丁寧に煮ます。里芋は「八つ頭(やつがしら)」とも呼ばれ、親芋の下に子芋が、その下に孫芋が連なるように育つため、子孫繁栄の祈願である縁起物です。

◆ 結びスルメ
スルメは日持ちが良いことから「幸せが続く」とされます。また、イカは足の本数が多いですが、昔の人々は「お金」を「お足」と読んでいたため金運が上がる縁起物としても親しまれていました。
ご縁を結ぶように、丁寧に結び上げたスルメは、噛むほどに旨みが増していきます。

【紅白生酢】
水引をかたどったものとされ、平和や平安を願っています。また、紅白の色合いがお祝いの席にふさわしく、新年の喜びを表しています。
私の「おせちへの姿勢」を見直すきっかけとなった想い入れの深い料理です。毎年おせちの仕込みで生酢を作る際には、初心を思い出し、親父さんに想いを馳せながら丁寧に仕込んでいきます。

【唐墨】
魚卵には「子孫繁栄」の願いが込められ、ボラは出世魚であることから「出世・大成」を祈願する縁起物としておせち料理の一品として並びます。
長崎から入荷したボラの子を、血抜き→塩漬→塩抜き→干しの工程で一カ月掛けて仕込みます。塩を抜く工程で、焼酎と酒をブレンドした駅に五日ほど漬け込みます。それを天日干しすると、オレンジ色だったボラの子が濃い茶色になります。手間暇かけて作っていく唐墨は我が子のように愛情を感じます。

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