秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
(秋の到来は、目にははっきりと見えないけれど、
そよぐ風の気配からハッと感じられるものだ)──
これは『古今和歌集』、秋上の巻頭歌に登場する詩です。
秋。新しい涼やかな心地よい風が吹き抜け、心も体も解放される季節。
皆さま、如何お過ごしでしょうか?
割烹一の谷の料理長、中川一朗です。
いつも皆様のとても温かなご支援に、心から感謝申し上げます。
◆”味”にぞ驚かされぬる
この神無月の季節は、私たち京料理人にとっても特別な時間です。
先ほどの詩を拝借すれば、「食の味にぞおどろかれぬる」とでも言いましょうか。
瑞々しく鮮やかな食材に出逢える季節ゆえ、私たち京料理人の腕が喜びのうなり声を上げます。
新鮮な食の驚きの味わいに満たされた一皿一皿を通じ、皆さまに秋の繊細な彩りを感じて頂けたら、これ以上ない幸せです。
◆秋の旬の食材
紅葉鯛・聖護院かぶ・海老芋・松茸・焼津の鯖・栗・代白柿
◆紅葉鯛・蕪
瀬戸内海や明石海峡の激しい潮流によって磨かれた紅葉鯛は、まさに旨味の極地。
そのお出汁で炊き上げた聖護院かぶと合わせ、舌触り滑らか、味わい深い一皿をお届けします!
◆海老芋
海老芋は京野菜の星。
香り高い鰹の出汁を添えて、心地良い甘みが舌に颯爽と広がります。
上品で美しく、豊穣でまろやか。これぞ京の味!
◆代白柿
10月後半から満を持して登場するのが、京都名産の代白柿。
奈良県で手摘みされた江戸柿のガクを焼酎に漬け、数日間じっくりと渋抜きを行います。
その結果、甘くとろけるような絶品の柿が生まれます。
秋の味覚の極みが、ここに!
…………
割烹一の谷が皆様にお届けする、駆け抜ける秋の味わいの風。
お腹もいっぱい、心もいっぱい。
美味しい食材の個性を最大限に引き出し、シンプルでありながら味わい深いお料理に仕上げています。
皆さまの大切な時間が、私たちのお料理によって一層華やかに、心に残るものとなりますように。
秋の魅力がたっぷりと詰まった、心からのおもてなしを、是非ともご堪能ください!
割烹 一の谷
料理長 中川一朗
10月のお献立例
・11,000円(税込)
・8,800円(税込)
前菜 海老菊花寿司 子持鮎甘露煮 蟹奉書巻 錦秋松風
栗渋皮煮 鈴子(いくら)霙和え 零余子串刺し
秋の吹き寄せ(栗煎餅、紅葉麩煎餅 公孫樹南瓜 松葉蕎麦)
椀物 甘鯛 松茸 湯葉豆腐 蔓菜 吸い口(柚子)
向附 その日の鮮魚四種
焼肴 塩釜焙烙(金目鯛 海老 舞茸 ひょうてい卵 銀杏)
強肴 河内鴨難波焼
温物 鯛蕪 ほうれん草
油肴 海老芋煎り出汁 鰆 万願寺 おろし 糸花
酢肴 帆立焼霜 柿生酢 酢取茗荷
御飯 吹き寄せ御飯
香物 二種
留椀 八丁仕立
水物 葡萄ゼリー 柿 メロン(10月後半より代白柿)
・6,600円(税込)